
「うちの子、将来どんな才能を開花させるんだろう?」
子育てをしていると、誰もが一度はそんなことを考えますよね。習い事をさせるか悩んだり、才能を伸ばすために何かしてあげたいと思ったり…。
実は、子どもの才能を伸ばすために、特別なことをする必要はありません。
家庭で手軽にできるアート体験と、美術館などでのアート鑑賞が、子どもの秘めたる可能性を引き出す鍵となるのです。
なぜアートが子どもの才能を伸ばすのか?

近年、子どもの教育において「非認知能力」の重要性が注目されています。
非認知能力とは、学力やIQなどの数値では測れない、意欲、創造性、コミュニケーション能力などの能力のこと。
これらの能力は、子どもの将来の成功に大きく影響することが、数々の研究で明らかになっています。
そして、この非認知能力を育む上で、アート体験とアート鑑賞が非常に有効であることが、脳科学や心理学の観点から証明されています。
脳科学的根拠
アート活動は、脳の様々な領域を活性化させます。
特に、前頭前野と呼ばれる領域は、創造性、思考力、問題解決能力などを司っており、アート体験によってこの領域が鍛えられることが分かっています。(Catterall, J. S. (2009). Doing well and doing good by doing art! Five years of arts & basic skills qualitying data from The study of Education in Creative Arts.)
また、アートはドーパミンという神経伝達物質の分泌を促し、意欲や集中力を高める効果も期待できます。
心理学的根拠
アートは、自己表現の手段として非常に有効です。
子どもたちは、絵を描いたり、音楽を奏でたりすることで、言葉では表現しきれない感情や思考を表現することができます。
この自己表現の経験は、自己肯定感を高め、心の成長を促します。(Winner, E., & Hetland, L. (2000). The arts as cognitive development: ‘Inquiry V’isiting arts’ smallest secrets.)
また、アートは他者とのコミュニケーションを促進する効果もあります。
共同で作品を制作したり、作品について話し合ったりする中で、子どもたちは他者の意見を尊重し、協力することを学びます。
アート体験&鑑賞で育むことができる4つの具体的な能力
1.創造性:

- 既成概念にとらわれない自由な発想を促します。
- 様々な素材や技法を試す中で、自分だけのユニークな表現を生み出す力を養います。
2.思考力:

- 計画、試行錯誤、問題解決といった思考プロセスを体験できます。
- 論理的思考力や批判的思考力を身につけます。
- 作品の背景や作者の意図などを考えることで、思考力や想像力を育むことができます。
3.自己肯定感:

- 作品が完成したときの達成感や、他者から認められたときの喜びを感じられます。
- 自分自身を肯定的に捉えることができるようになります。
- 美術館で様々な作品に触れることは、新しい発見や感動に繋がり、子供は、自分自身の感性や考え方に自信を持つことができ、自己肯定感の向上に繋がります。
4.コミュニケーション能力:

- 言葉だけでなく、様々な表現方法を用いて他者とコミュニケーションする力を育みます。
- 他者の意見に耳を傾け、自分の考えを伝える力を養います。
- 親子で一緒に美術館を訪れ、作品について話し合うことは、コミュニケーション能力を高める上で非常に有効です。
今日からできる!親子で楽しむアート体験&鑑賞を7つ紹介
1.お絵かき:

- クレヨン、絵の具、指絵など、様々な画材を使って自由に絵を描きましょう。
- 親子でテーマを決めて、一緒に絵を描くのもおすすめです。
2.工作:

- 紙、粘土、廃材など、身近な素材を使って自由に工作を楽しみましょう。
- 親子で協力して、大きな作品を作るのも良いでしょう。
3.音楽:

- 楽器を演奏したり、歌を歌ったり、音楽に合わせて体を動かしたりしましょう。
- 親子で好きな音楽を聴きながら、感想を共有するのもおすすめです。
4.ダンス・演劇:

- 身体表現を通して、自己表現力やコミュニケーション能力を育みます。
- 他者と協力して作品を作り上げることで、協調性や社会性を養います。
5.写真・映像:

- 観察力や美的センスを磨きます。
- 自分の視点で世界を捉え、表現する力を育みます。
6.料理:

- 五感を使い、創造性を発揮します。
- 食材や栄養についての知識を深めます。
7.美術館・展示会へ行こう:

- 子どもの年齢や興味に合わせて、美術館や展示会を選びましょう。
- 鑑賞前に、作品の背景や作者について簡単に調べておくと、より深く鑑賞することができます。
- 鑑賞中は、子どもに自由に作品を見させ、感想を聞いてあげましょう。
- 鑑賞後には、作品について話し合ったり、感想画を描いたりすることで、体験を定着させることができます。
アート体験&鑑賞をするときの5つのポイント

1.子どもの自主性を尊重しましょう。
子どもが自由に表現できる環境を整え、大人はサポート役に徹しましょう。
2.プロセスを重視しましょう。
完成した作品だけでなく、制作過程も褒めてあげましょう。
3.親子で一緒に楽しみましょう。
親が楽しんでアートに取り組む姿は、子どもにとって最高の刺激になります。
4.日常に取り入れる:
特別な時間を設けなくても、日常の遊びや生活の中でアート体験を取り入れることができます。
例えば、お風呂でお絵かきをしたり、散歩中に落ち葉や木の実を使って工作をしたりすることができます。
5.子どもの作品を展示する:
子どもの作品を家に飾ったり、写真に撮ってアルバムにしたりすることで、子どもの自己肯定感を高めます。
アート体験&鑑賞の効果を高めるために
研究事例の紹介:
ミシガン州立大学の研究(Root-Bernstein, R., & Root-Bernstein, M. (2013). Imagination grows along with knowledge: Defining the components of creative thinking.)によると、多様な芸術活動に参加した子どもたちは、そうでない子どもたちに比べて、創造性テストのスコアが平均で約20%高いことが示されました。
特に、異なる芸術分野を組み合わせた活動(例えば、音楽に合わせて絵を描くなど)は、子どもの想像力と知識の相互作用を促進し、より高い創造性を育むことが示されました。
アーカンソー大学の研究(Greene, J. P., Kisida, B., & Bowen, D. H. (2014). The educational value of field trips: Experience from the national museum of the american art.)では、美術館訪問後に子どもたちの批判的思考能力が平均で約18%向上したことが示されました。
また、歴史的共感性についても、特に歴史的な背景を持つ作品を鑑賞した子どもたちにおいて、顕著な向上が見られました。
福岡市美術館で行われた実証実験では、美術鑑賞が心理的な緊張や不安を減少させ、活気と活力を高めることが示されています。
専門家の意見:
ボストン大学の心理学教授であるエレン・ウィナー博士は、著書「How Art Works: The Cognitive Style of Visual Thinking」の中で、「芸術作品を鑑賞する際には、細部まで注意深く観察し、作品の構成や技法、作者の意図などを分析する能力が養われる。
これらの能力は、他の分野においても問題解決や批判的思考に役立つ」と述べています。
ハーバード大学のハワード・ガードナー博士は、多重知能理論において、芸術活動が言語的、論理数学的知能だけでなく、空間的、音楽的、身体運動的、対人的、内省的知能など、多様な知能の発達を促すと述べています。
例えば、音楽活動は音楽的知能を、絵画や彫刻は空間的知能を、ダンスや演劇は身体運動的知能を、他者と共同で作品を制作する活動は対人的知能を、自分の感情や思考を表現する活動は内省的知能を、それぞれ発達させると考えています。
銀座靖山画廊オーナーである美術商の山田聖子氏は、「絵画や映画、音楽など芸術に触れることで生まれた思いを、『どうしてそう思ったのだろう?』と深く考えることで思考力が育まれます。
思って、考えたことを人に伝えようとすることで表現力が培われます。」と述べています。
これは、芸術鑑賞を通じて、子どもたちが自分自身の内面と向き合い、思考を深めるプロセスを重視していることを示しています。
また、自分の考えを他者に伝えることで、コミュニケーション能力や表現力を高めることも強調しています。
例えば、美術館で絵画を鑑賞した後に、親子で「この絵を見てどう思った?」「どんな気持ちになった?」などと話し合うことで、子どもの思考力や表現力を育むことができると述べています。
まとめ
アート体験とアート鑑賞は、子どもの創造力や思考力、自己肯定感を高め、未来の可能性を広げる素晴らしい方法です。
さらに、親子の絆を深める素晴らしい機会でもあります。
✅今日からできること!
- お絵かきや工作を親子で楽しむ
- お風呂や散歩中など、日常の中でアートを取り入れる
- 週末は美術館やギャラリーに足を運び、作品を一緒に楽しむ
お子さんがどんなアートに興味を持つか、ぜひ試してみてください!
親子でアートを楽しむ時間が、未来の才能を育む第一歩になります。
ぜひ、家庭でアート体験を取り入れ、美術館にも足を運び、お子様の可能性を広げてあげてください。
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